勇将、猛将が群雄割拠する戦国時代。尾張の風雲児・織田信長は、とてつもない強運と時代離れした発想のスケールを武器に快進撃を続け、今や天下統一を目前にしていた。
 信長に仕える家臣の中でも筆頭の地位にある羽柴秀吉明智光秀は、お互いに、少しでも優れた手柄を立てて信長から褒美を得んと、凌ぎを削る同士。二人とも、心底から主人・信長を畏怖し、その家臣であることに尋常ならざる誇りを持っていた。いずれ信長が天下を取るであろうことに疑いはない。その想いはすでに信仰に近く、信長からお褒めの言葉を受けるだけで、恍惚とした快感に襲われる程である。
 だが、その信仰の光は、ある嵐の夜を境に、裏切りの炎と変わる──────。
 その夜、風雨吹きすざむ中、信長の居城・安土城から程遠くない安土御宝山の山中に、まるで千本もの稲妻を束ねたかと思うような凄まじい落雷があった。
 すぐさまわずかな手勢と羽柴秀吉を引き連れて調査に出かけた信長一行は、落雷現場の異常な状況に驚く。そこには、見かけたこともない調度品で飾られた小さな部屋が、まるで稲妻に乗って天から落ちてきたかのように、黒焦げの状態で、山肌に居座っていた。雨の中、詳しく現場を調べるうち、秀吉は信じ難い書物発見して、愕然とする。
『チャート式日本史』────半分ほども焼け焦げたその書物には、過去の日本の歴史が記されているだけでなく、現在より先の出来事までが記されてあった────。
 巻き起こる未曾有の裏切り、未曾有の戦。行く手を遮る巨大な“歴史”の壁に己の存在と未来を賭け立ち向かう信長。 
 果たして、歴史が我々の主なのか、我々が歴史の主なのか。
 かつて比類なき壮絶な戦いの火蓋がいま、切って落とされる──────。